政策学研究科は、2011年の開設以来、「現代的で人類的な課題に対する専門知識に支えられた市民的思考力」と「協働による課題解決アプローチを構想できる政策研究能力」を有する人材の養成を進めてきました。そして2025年度から、われわれは新たな挑戦をスタートします。政策学をアカデミックに追求する「政策学研究コース」、政策学の知識を実践の現場で活用する能力を養う「NPO・地方行政研究コース」という既存の2コースに加えて、地域課題にイノバティブな考えと手法で取り組み、新たな付加価値を生み出す人材を養成する「ソーシャル・イノベーション研究コース」を新たに開設します。
現代社会の課題は、少子高齢化にともなう福祉・財政問題、国内外で深刻化する経済格差、IT犯罪、ジェンダーやLGBTQ、気候変動・エネルギー問題など、多様な領域にわたります。政策学研究科はこれまで、これらの課題に「公共」と「協働」というキーワードを軸にアプローチし、「地域公共人材」を養成する教育プログラムを提供してきました。今回のコース新設は、この2つの軸に「イノベーション」という新たな軸を加え、「社会課題の原因を多面的視点から見抜く力」と「多様な領域の知見を組み合わせて新たな価値を創造する力」を養成する教育プログラムへと発展させることを企図しています。
ソーシャル・イノベーションという言葉から、ビジネス・パーソンや起業を志す人向けと思われるかもしれませんが、われわれのプログラムはそれだけに限りません。ビジネス・セクターはもちろんですが、地方自治体などの政府セクターや、NPOや非営利法人などの市民社会セクターにおいても、「イノベーション」への要請は高まっています。われわれの教育プログラムでは、どの研究コースに所属しても、ほぼすべての講義を受講できる柔軟な体制を整えており、受講者の関心や職種に応じた「イノベーション」へのアプローチを学ぶことを可能にしています。
われわれはまた、リスキリングやリカレントといった学び直しへの社会的要請への対応も重視しています。キャリアチェンジを志す方だけでなく、所属する組織内で直面する課題にイノバティブな視点で対応する能力を強化したい方にも、充実した学びの機会を提供します。
当研究科のもう1つの特徴が、院生の多様性です。若手の学部卒業生から、キャリア形成を目指す現役の社会人、リタイア後に生涯学習として学ぶ方、そして海外からの留学生まで、さまざまなバックグラウンドを持つ人々が集います。この多様な院生が有する多彩な知識や経験にもとづいた活発な議論が、他にはない学びの相乗効果を生み出す原動力となっています。
最後に、当研究科は、環境、地域政策、都市計画、経営学、経済学、法学など、専門も経験も多彩かつ豊富で、そして何より教育に情熱を注ぐ教授陣と、院生の皆さんの学びを親身にサポートする事務局体制を備えています。政策学研究科での学びを通じて、複雑化する現代社会の課題に果敢に挑む力を身に付けながら、充実した学びの時間を私たちと共に過ごして頂きたいと思います。志の高い皆さんの入学を心よりお待ちしています。
政策学研究科長 的場 信敬