政策学部に入学した皆さんは、一度は、「それって何をする学部なの?」と親戚や友人から質問されたことがあると思います。
法学部、経済学部、工学部、医学部・・・は何をするところって尋ねる人はあまりいないでしょう。
それは、「どこで」「誰が」「誰に」対して、それらの学部や大学院で学ぶことをどう使うのかが想像できるからです。
例えば法律学を学ぶ場合、法廷で、原告(訴えた人)が被告(訴えられた人)に、法律に基づいて何かを要求する場面。医学を学ぶ場合には、病院で、医師が患者に最新の治療を施す場面などを、学ぶ前からある程度は想像できます。
一方、政策という文字を見て、それは政治や行政の世界の話だと思う人も少なくありません。そうすると、議会で、議員からの質問に対して応答している議員を思い浮かべたり、そこで議論される資料を作成している公務員の様子を想像して、「議員にも公務員にもなるつもりはないので、私には関係のない話だ」と思ってしまうかもしれません。
しかし、そこで提案、議論、決定される政策の中身に目をやることが大事です。エネルギーや環境に関すること、教育や研究に関すること、住む場所や交通のこと、税金や社会福祉に関すること、働く環境や産業のことなど、私たちに直接的あるいは間接的に影響することばかりです。つまり、政策をつくって運用する「誰が」も幅広ければ、その政策の影響をうける「誰に」も様々なのです。このため、良い政策を作って運用するには「誰が」に当たる人も「誰に」に該当する人も、様々な政策を評価して修正したり新しく提案するために、多様な知識や教養を身につける必要があります。そうでなければよい政策などできないのです。このように考えると、政策を理解するためには、法律や政治といった特定の知識だけでなく、様々な幅広い分野の知識や教養を持ち寄る必要性をご理解いただけたと思います。
もう一つは、「どこで」の対象も様々なのです。政策は英語で言うとPolicy です。これは政府の政策を意味するだけでなく、民間の方針や理念までをも含みます。会社でも経営理念を定め、方針を決めて事業活動をします。それによって、経営理念や方針に共感した人たちが集まって、労働力や資金を提供しあって個人ではできないようなことが達成できるようになります。このため、民間であっても政策を決めて実践し、見直すための様々な知識やノウハウが必要になります。
さらに、最近では社会の問題が複雑化しています。行政の力だけでは解決できないことが多くあります。脱炭素問題ひとつをとりあげても、法律や条例で規制をするだけでは解決できず、学術機関や民間企業などの知恵の融合によって新しい技術や仕組みを生み出していかねばなりません。さらにそれらの取り組みが持続するようにしないといけませんから、そこに新しい価値を生み出して事業として取り組むことが求められたりもします。そうすると、そこには科学技術や企業経営に関する知識も必要になります。加えて、一部の組織や地域だけでなく社会全体の仕組みを変えていくことが必要になることもあります。その場合には地域のポテンシャルを見抜く目や多面的な思考、イノベーションの力も要求されます。近年ではそのことをソーシャル・イノベーションと呼んでいます。
それらの力につながる知識や教養、実践の力を身につけることができるのが政策学部の魅力です。
加えて、最近では学士だけでなく、修士や博士といったより高い研究力を身につけるために大学院政策学研究科に進む人も増えています。大学院では、地域の社会課題を解決する力を修得したことを証明する「地域公共政策士」や「ソーシャル・イノベーション・デザイナー」の資格を取得する道も用意しています。
政策学部が対象にしている領域はかなり広いことがお分かりいただけたと思います。
このため政策学部には、非常に幅広い知識や教養を修得することができるように、様々な分野の教員が集まっています。また、学んだことを実際のフィールドで実践する課題解決型の授業も多く提供しています。そして学生想いの教員が多く、学生と教員の距離が近いことも特徴です。さらに、学生生活での様々な相談にのる教務課のスタッフも自慢です。
ここまでお読みいただき、「政策学部は何をするところ?」の疑問に答えられるようになってきましたね。でもこの限られたスペースでお伝えするのには限界があります。
さあ、もっと社会のしくみや課題をしっかり理解し、その課題解決に必要な幅白い知識や教養、実践力を身につけることができる、ちょっと欲張りな政策学部で一緒に学びましょう。
政策学部長 中森孝文