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Training Program for
Social Innovation Designer

大学連携型ソーシャル・イノベーション人材養成プログラム

「ソーシャル・イノベーション実践演習」最終発表会 【前編】

[ 2026.3.6 更新 ]

「ソーシャル・イノベーション実践演習」最終発表会

ソーシャル・イノベーションに向き合った1年の集大成

2025年12月6日(土)、龍谷大学深草キャンパス 慧光館にて「ソーシャル・イノベーション実践演習(※)」最終発表会が開催されました。
受講生たちは4つのチームに分かれ、地域の課題の解決に向けた施策の立案に約1年かけて取り組んできました。今回はその成果についてご紹介します。(順番は最終発表会当日通り)

※「ソーシャル・イノベーション実践演習」とは

  • 大学連携型ソーシャル・イノベーション人材養成プログラムの核となるキャップストーン科目。
  • ソーシャルイノベーションデザイナー資格取得にも必要な「総仕上げの、総合的な経験をする実践的なプログラム」として、3つの大学院の受講生が共に現場で取り組むことが特徴。
  • ソーシャル・イノベーションについて講義で積み上げてきた理論を現実的な社会課題解決の実践に向けて、地域課題の原因を構造的に把握し、解決のための地域資源とそのポテンシャルを明らかにし、多様な領域の知見と融合させて、新たな価値創出につなげることが評価ポイント。

「障がい者雇用の現況と地域資源の発掘」
(障がい者雇用チーム)

メンバー/西口高貴 、林リエ (龍谷大学大学院)、安里恵美 (琉球大学大学院)、橘今日子 (京都文教大学大学院)

〈テーマ概要〉

障がい者の働き方、働く場の課題解決

非正規雇用などの不安定な雇用・労働条件のもとでの就労に加え、さまざまな場面で障がい者の就労が困難とされる社会構造を変えるためのアイデアを創出していく。

〈研究・調査〉

沖縄県北中城村でバニラビーンズの栽培において障がい者を雇用するソルファコミュニティ代表・玉城卓氏に協力を仰ぎ、取り組みを現地調査。農福連携により、希少性の高いバニラビーンズの収益による事業と雇用の持続が見られた。障がい者の障がいを個性ととらえ、個性を活かす業務により障がい者の個性を付加価値に変える事業を展開していた。中間発表会後は、玉城氏や地域の方などにインタビューを重ね、取組みを地域に広げ展開するために、地域との交流や協働による地域活性化について検討。沖縄に根づく「ゆいまーる(互いに助け合うこと、相互扶助の精神)」というポテンシャル、そして障がいの有無、年齢、性別、国籍などにかかわらず、すべての人が互いを尊重・理解し、支え合いながら生きていく「共生」のための「ゆいまーるプラットフォーム」の提案に向けた調査。

〈立案した課題解決策〉

「中間支援機能を備えたソーシャルファームの導入」

障がい者雇用を生み出すには地域の物的・人的資源の活用が重要。「人のつながり」に主眼を置いた新たな仕組みづくりを目標に掲げた。
現状、玉城氏の農園には福祉事業所から就労を希望する障がい者が紹介されているが、持続性の観点から適切なマッチングがなされていないということから、福祉事業所と企業の間に適切なマッチング機能が欠如している社会構造に課題の原因があることを突き止めた。これを受けて、これを受けて各障がい者に適した営利事業の業務を行ってもらうソーシャルファームを設立し、そこでの業務経験を通じてこれを受けて各障がい者に適した営利事業の業務を行ってもらうソーシャルファームを設立し、外部の多様な事業所の業務へ、その業務に適した障がい者を派遣することでスムーズな経済活動と障がい者の業務の確保を両立する中間組織を構想するに至った。これは、玉城氏の農園の人々の個性を活かしながら自律的な経済活動を行うことと、その一方でマッチングの課題に悩むことにヒントを得たものである。ここから「一般社団法人ゆいまーる会社」を構想した。
農業は福祉だけでなく、教育、観光などあらゆる要素とつながりやすいことも強み。同構想では組織の持続性を高めるために、ひきこもり支援として農園での就労体験を通じて社会復帰をめざす、観光向けの収穫イベントを開催して収益につなげるといった取り組みも順次実行することを計画。さらに、地域の企業や団体、自治体も複合的につなぐハブとしての役割を果たし、「共生」を実現していくことを提案した。

〈教員のコメント(集約)〉

玉城氏の農園での現地調査を通じて、農業のポテンシャルに気づき、さまざまなモノ・コトをつなぎ、起業まで構想したことは素晴らしい。これまでの農福連携の課題であった縦割りの仕組みを打破する横断的なつながり、さらにこれを大きな輪として広げ、循環させていく「プラットホーム」になると思われる。一方、ソーシャル・ファームを軸にどのように社会に変革を起こしていくのか、今後の展開に期待したい。

〈最終発表会を終えて/メンバーコメント抜粋〉

  • このプロジェクトを通じて、さまざまな情報をもとに多層的な空想を持ち、イメージを築いていく力が身についたと感じています。現地調査によって肌で感じた感覚、生の声がイメージをさらに膨らませ、空想が現実的なものになっていく感覚もありました。
  • 社会構造を深く読み取る洞察力とアンバランスな社会課題をリアリティがある事柄に投影していくための発想力を育むことができました。この経験を私の研究実践である、地域コミュニティの中で「暮らし」を通した学び合いに活かしていきたいと考えています。
  • 多角的な視野からものごとを受け入れ、排除せずに受け入れる姿勢を身につけることができました。実際に見て聞いてリアルに感じることにより、想像力が膨らみました。実際に聞いてみないとわからないことが多かったので、今後も足を運ぶことを重要視していきます。

「学びの多様性と教育をめぐる課題 ~発達障がい者のキャリア形成に関する現状と課題、支援の「つながり」について~」
(学びの多様性チーム)

メンバー/成松正樹(龍谷大学大学院)、金田佳宏(琉球大学大学院)、横山温子(京都文教大学大学院)

〈テーマ概要〉

発達障がいの子どもたちの教育とキャリア形成

本人と家族が望む進路を選択できていない、支援から漏れているケースが少なくない発達障がい者の教育とキャリア形成について、一人ひとりが自分の個性と可能性を十分発揮でき、希望する将来を叶えられる新たなシステムを考える。

〈研究・調査〉

発達障がいの心理学的な見地や支援制度について調査。発達障がい児童の教育・支援活動を行う株式会社サイクロス「あすはな先生」、学校現場で活躍する臨床心理士などへのインタビューも実施。発達障がいへの社会的な理解、専門的な教育機関や支援策の情報の発信や受け入れ体制の仕組みの創出に取り組む。中間発表会ではプロジェクトのゴールが不明確との指摘があったが、このテーマは一本の糸のような単線型の対策では解決が難しいことから、いくつかの糸が交じり合うロープのような複線型の概念をもって、子どもたちや保護者、支援者、教育・就労機関をつなぐ仕組み、社会の有り様を探った。

〈立案した課題解決策〉

発達特性のある子どもを含む多様な子どもたちが共に遊び、学べる場を地域へ

発達障がいや発達特性のある子どもと保護者、教育・支援機関、就労可能な企業や組織をつなぐ社会的システム・組織として「つながりプラットフォーム」を構築する。
発達特性を持つ子どもたちのキャリア形成の課題として、まず支援が「点」として散在し、「線」としてつながっておらず、教育から就労へのライフステージ移行期に支援が途切れる「支援システムの不連続性」という課題がある。さらに現在の学校は年齢毎の一般的な発達レベルとされるものを前提とした、学習指導要領に基づく指導が中心のため、個性や特性に応じた多様なニーズへの対応が難しく、本人も家族も将来設計を描きにくいことも課題として挙げられる。
これらの構造的課題に対し、切れ目のない個々に最適な学びの環境を提供する必要性を指摘。持続的な取組みとするためにフランチャイズなどのビジネスの手法を用いることで、全国各地に展開し、「学びの多様化」と発達障がいや発達特性のある子どもの教育と就労を共に実現していく。

〈教員のコメント(集約)〉

3大学から集まった受講生それぞれの専門知識を活かし、ビジネスの視点、教育の視点、臨床心理の視点から考察。「つながりプラットフォーム」という形にしたことが評価できる。
テーマの構造的課題は複層化しているため、このような多様な人々との共生をめざすインクルーシブな地域支援組織やシステムは重要である。一方で、潜在化している発達障がい者も少なくないことから、ビジネスとしての規模感は未知数の部分も少なくない。地域の支援センターとタッグを組み、この「つながりプラットフォーム」を子どもや家族に周知していくことがまず必要である。

〈最終発表会を終えて/メンバーコメント抜粋〉

  • 世代や専門分野も違う方々と対話を重ねる中で、違いに橋をかける視点を育むことができ、臨床心理学で学んできた考えや感覚を、社会の仕組みづくりに結びつけていく視点も深まったと感じます。また、人がどう生きていくのかということを、ミクロからマクロの両面から考える姿勢も深まったと感じます。
  • 今回のチームのような体制で取り組む機会を醸成することによって、発達障がいなど複雑な社会の一般常識や価値観から生じる、単純に割り切れない壁も捉えることができた経験を活かしていきたいと思います。
  • 発達障がいだけでなく、社会課題は制度や領域の「すき間」に生じ、その「すき間」に陥り困難を抱える人が多いと気づくことができた点が大きな成長でした。今後も現場の声を聞き、「見えていない当事者」の姿を描き出すリサーチを継続して、その気づきを学校・福祉・企業・行政などのプレイヤーと共有しながら、支援の「つながり」をデザインしていきたいです。

※続きは後編でお伝えします。