Need Help?

Training Program for
Social Innovation Designer

大学連携型ソーシャル・イノベーション人材養成プログラム

多様な仲間と視点で現実の課題解決に挑む貴重な機会 「ソーシャル・イノベーション実習演習」紹介【後編】

[ 2026.3.18 更新 ]

障がい者雇用チームメンバー

「ソーシャル・イノベーション実践演習(以下SI実習)」は、大学連携型ソーシャル・イノベーション人材養成プログラムの核となり、ソーシャルイノベーションデザイナー資格取得にも必要なキャップストーン科目。3つの大学院の受講生が共に現実の社会課題解決に向けて取り組むことが大きな特長です。そこで、今回は「障がい者雇用の現況と地域資源の発掘」というテーマの課題解決に取り組んだ障がい者雇用チームの4人にSI実習の魅力を語り合ってもらいました。

●障がい者雇用チームメンバー

障がい者雇用チームメンバー

龍谷大学大学院政策学研究科 西口 高貴さん
龍谷大学政策学部から入学したストレートマスター。学部時代から地域でのフィールドワークに取り組んできた。ソフトなまちづくりをするのが夢。

龍谷大学大学院政策学研究科 林 リエさん
京都府向日市議会議員。福島県の原発事故に端を発し、福島こども応援プロジェクト「ミンナソラノシタ」を設立。世界の社会問題に取り組む企業を経て、市政に挑戦。

琉球大学大学院地域共創研究科 安里 恵美さん
教育を専門とし、チルドレンミュージアムや学童支援施設などで活躍。子どもを取り巻く社会環境の重要性を感じ、複層的な課題を俯瞰的にとらえるために入学。

京都文教大学大学院臨床心理学研究科 橘 今日子さん
臨床心理士として医療現場で支援にあたる中、心理的要因による休職者、退職者の多さを再認識。社会の仕組みから見直すために本プログラムを学ぶことを決意。

●SI実習の取り組みを通じて、3つの大学院連携の魅力、多種多様なメンバーで取り組むメリットをどう感じましたか。

:安里さんは教育、橘さんは臨床心理、西口さんは政策、私は政治と、4人との専門分野も仕事も違ったからこそ、議論や考察がどんどん広がり、深まっていきましたよね。私は異なる専門、異なる立場の人が一つの課題に取り組むメリットをすごく感じました。

:私も同じです。それぞれの分野の専門用語や立場の違いによる言葉の齟齬、個人の考え方の違いなどは多少ありましたが、何度もやり取りを重ねることで視点が多層的になって。3人の専門である教育、政策、政治の視点、さらに普段の講義やこのSI実習の中間発表会で他チームのメンバーの経営や経済、金融の視点も知ることで、課題が深まったと思います。こういったプロセスが3大学院連携ならではでしたよね。

安里:年齢も、育った環境も、専門も違う中で、共通認識を見出すための「対話」ができたのがよかったと感じています。議論はともすれば二項対立になりがちですが、私たちはとても友好的で「その意見をこの文脈に置くとどうなるか?」とお互いを尊重することが自然にできましたよね。

:そうです。4人のバランスが絶妙で。議論を重ねて、最後は「とにかく前に進んでいこう」「一つひとつ実行していこう」というところに落ち着いて。

西口:私が専門とする政策学はいろいろな学問を組み合わせて、課題解決につなげていくものなのですが、学部時代と異なり、3人はもちろん、プログラムを通じて社会人の皆さんの話を聞けたことがよかったです。自分の知識や興味関心だけで動くのではなく、多角的な視点を持たないと根本的な解決はできないと強く感じました。

●2025年7月に琉球大学での「中間発表会」、10月に龍谷大学で開催された「日本ソーシャルイノベーション学会 第7回年次大会」での発表、そして12月の「最終発表会」に向けて、皆さんはアイデアを磨き上げ、最終的には「中間組織」の設立を提案されました。

安里:北中城村でのヒアリングや4人での議論を重ねる中、障がい者の雇用は、行政の補助金で成り立っていることが課題なのではと気づき、この枠組みを超えるために、現場と障がい者を繋ぐ別組織を作る必要があると考えたんですよね。最初に検討していた、私たちの実践の場であるソルファコミュニティの内部ユニットでは、行政の枠組みから抜け出せないのではと。ここは議論が白熱しましたよね。

西口:最終的には「中間支援組織として、会社を立ち上げたほうがいいんじゃないか」という結論に至って。

:私は市政に携わる身です。残念ながら、行政の支援に限界があることは重々理解しているので、民の力というか、法人化された「中間組織」が必要と思いましたね。そこでビジネスモデルを実現可能な解決策として提案したのが「ゆいまーる」という会社の立ち上げで。

:“ゆいまーる”は沖縄の言葉で相互扶助を意味するんですよね。現地でのヒアリングを通じて「みんなのためにやっていこう」という気持ちがどの会話にもどの行動にも宿っていることに私たち京都組3人が感動して。それで、沖縄の方々の根底にある「相互扶助」の精神である“ゆいまーる”を軸にしようということになりました。

●提案で終わらせてしまうのがもったいないほど素晴らしいアイデアですね。そこで、皆さんが創出されたビジネスモデルを誰かが引き継ぎたいと打診があれば、託したいと思われますか?

:もちろんです。現状、それぞれの仕事や立場があるので、私たちが起業することは難しいのですが、積み上げてきた成果をリアルなカタチにしたいという気持ちが強いです。そのため、誰かにギフトすることに抵抗はありません。

安里:行政でも民間でもどんな機関でも構いませんよね。このように受講生の成果が社会で実装され、汎用的に使われていくことは、プログラムとして理想的だと思います。

:ギフトした後も、一緒に農業をするなど、何らかのカタチで関わり続けられたらベストですね。

西口:ぜひ活用いただきたいし、そこに参加できたらいいなと思います。

●SI実習を通じて、皆さんが実感されている成長点や収穫、それらを今後どのように活かしていきたいか、目標や展望をお聞かせください。

安里:複雑化する社会の中で「希望を持って前進できる基礎体力」がついたと感じています。将来的には、現代の暮らしや人びとの考えにマッチした自治会の立ち上げや、学校教育にプロジェクトベースの学習を還元できるような「中間組織」を作りたいと考えています。今回創出したアイデアと同じく起業というカタチになるのかもしれませんが、学習環境を整える活動をしていきたいです。

:市議会議員として、市政と「まちづくり」に学び得たことをバリバリ活かしていきます。行政が十分に対応しきれていない部分も痛感したので、これを変えていく力にしたいです。 実は私がSI実習に取り組み始めるタイミングで、兄がソルファコミュニティと同じ農福連携の就労継続支援B型事業所を立ち上げることになったんです。こういった施設の重要性と可能性、一方で課題が山積していることもSI実習によってしっかり把握したので、今後は兄へのアドバイスを通じて解決に取り組んでいこうと思っています。 もう一つ、現地でのフィールドワークを行ったことで、“ゆいまーる”には、沖縄の戦争体験も影響していることを感じました。こうした日本の歴史や地域の背景を知ることができたのも大きな収穫です。

:私は「知ろうとする力」を持ち続けることの大切さを学びました。専門や文脈が違うメンバーの中で、お互いのプライベートやバックボーンまで深く知ろうとしたからこそ、尊重し合えるチームになれました。現地でも北中城村役場をはじめ、たくさんの人たちの「生の声」を聞くことにこだわりましたね。これは私が専門とする臨床の現場でも同じです。臨床心理士として、クライアントのことをどれだけ知りたいと思えるかが信頼関係につながっていくのだとSI実習で再認識しました。

西口:分析力や洞察力といったアカデミックなスキルが飛躍的に向上したとともに、「受け入れることの大切さ」を学びました。 自分の知識や研究に固執するのではなく、理解しにくい意見も真剣に考えて吸収することが、社会人、そして、めざすソーシャルイノベーションデザイナーになる上で大事な要素だと気づきました。 将来的には、この学び、経験を活かして、ソフト面からのまちづくり、地域のコミュニティづくりに携わっていきたいと考えています。

●最後に、大学院への入学や「大学連携型ソーシャル・イノベーション人材養成プログラム」の受講を検討する方々に向けて、改めて「ソーシャル・イノベーション実習演習」の魅力をお伝えください。

:学びと実践を同時に行うこのSI実習は、頭だけで考えるのとは全く違う良い勉強になります。 違う扉を開けてくれるような、自己認知の視野が広がる貴重な時間と経験になることは間違いありません。

安里:子育ての経験から感じたことですが、妊娠や出産、育児に入ると、どうしても社会から離れてしまいます。そんな方々も大学院に入学し、SI実習を受講すれば、社会との接点を再び持つ、子育てをはじめ今やっていることがどれだけ大切なことなのかを知るといった自分の活動の意義を確認し、活躍するための知識や経験を得られると思います。

西口:違う大学が連携して一つの課題に取り組む希有な場です。 多様な考えを吸収することで、将来のどんな分野にも応用できるトレーニングにもなります。私はストレートマスターなので、社会に出る前にこうした実践的な学びを挟めたことは本当に良かったですね。大学院に進学し、このプログラムを受講すれば自分の可能性が大きく広がると思います。

:SI実習を通じて、普段の生活では考えられない経験ができました。私は経験が人間性の深みを作ってくれると思っています。どんな経験でも必ず自分の糧になるし、実際に以前よりもいろいろな面での成長を感じています。 そして、何よりよかったことは「人脈」ができたことです。このメンバーや沖縄の方々、プログラムの1期生、先生、連携企業の方など、すべてのつながりがこれからもずっと続いていく、かげかえのない財産となりました。