[ 2024.1.31 更新 ]
ビジネス的発想による社会課題解決の可能性
-最近、ソーシャルイノベーションという言葉をよく耳にしますが、その理由を教えてください。
これまで日本では社会課題の多くを行政による財政支出によって解決してきました。しかし、少子高齢化、社会課題の複雑化、社会の持続可能性などの観点から、財政に頼らない仕組みを作らなくてはならなくなってきたのです。そこでビジネス的発想に基づくソーシャル・イノベーションに注目が集まるようになりました。
-行政主体の取り組みとはどこが違うのですか。
社会課題の中から何かのポテンシャルを見つけて事業として成立させて新しい価値を生み出し、社会課題を解決するということです。成功例を挙げるとすると、徳島県上勝町の「葉っぱビジネス」ですね。地域の高齢者が有していた花木の栽培ノウハウといった知恵を、料理の“つまもの”として商品化する産業を軌道に乗せて、高齢化から生じる社会課題の解決にむけて重要な一つの方向性を示しました。
-社会課題をビジネス化すると言うことでしょうか。
ビジネスありきではなく、まずこの困りごとはどうすれば解決できるのか、この不便さを解消するのはどうしたらいいのか、社会課題を主語にして考えることが大切です。例えば駅の自動改札機は、駅の混雑や駅員の負担を軽減しようと考えられ、結果として私たちに便利さと快適さや新しい生活スタイルをもたらしました。社会課題の解決に注力することで、自ずと社会のあり方まで変わっていくものだと私は思います。
政策学研究科だからこそ養える社会を変える力
-なぜ、政策学研究科でソーシャル・イノベーション人材を養成しようと思われたのですか。
ソーシャル・イノベーション人材には多面的に物事を見る力が必要です。同じ方向から同じ見方をしているだけでは課題は課題のまま。その中のポテンシャルまで見抜くことはできません。さらに何とマッチングさせるか、新しい価値をいかに生むか、その価値を認めてもらえるためにどう発信するか、いろんな視点から眺めていろいろ試して可能性を見極めなければソーシャル・イノベーションは起こせません。
幸いにして政策学研究科は、私のような経営学の専門家をはじめ、環境や建築、都市計画、政治や経済、レジリエンス、言語など、さまざまな領域の研究者が集まっており、多様な切り口から物事を捉える力を養える土壌があります。この環境を生かさない手はないと考えました。
-政策学研究科は、行政や政治など公共政策の研究者を養成するイメージがありますが、すでに民間企業に勤めている社会人でも学べますか。
先ほども申しました通り、ソーシャル・イノベーション人材養成プログラムは、公共政策だけでなくビジネス的発想による社会課題の解決を考える力を身につけるものです。企業が従業員に対して新たに学ぶ機会を提供するリスキングや社会人が自主的に学び直しをするリカレントのニーズにも応えられるものになると思いますね。
広がる領域と相乗効果への期待値
-京都文教大学、琉球大学と連携した理由を教えてください。
そもそもこの三大学には、地域課題を解決する人材を養成する「地域公共政策士」という資格プログラムを運用しているという共通点があります。政策学研究科は、人文社会科学系のほぼ全域をカバーしているのですが、心理学の研究科がある京都文教大学と組むことによって、心理的安全性の高い組織の運営や社会課題の一つである職場のメンタルヘルスの問題に対応できる力を身につけられるようになります。また観光問題や伝統産業の振興など共通課題が多い沖縄の大学と協働し、京都地域以外の課題にも取り組むことで、多様な課題に対応できる人材が育てられると考えました。
-三大学で協働することにより学びの幅が広がるということですね。具体的にはどのようなカリキュラムを展開する予定ですか。
まだ具体的には決まっていませんが、それぞれの大学と協働で社会課題などを持ち寄り、フィールドワークなどを通じて解決策を検討する機会も設けようと考えています。三大学が連携することでどのような相乗効果があるか、今から楽しみですね。
誰が学べる? 何を学べる?
「大学連携型ソーシャル・イノベーション人材養成プログラム」の
構想を中森政策学研究科長にインタビュー【前編】
[ 2024.1.31 更新 ]
ビジネス的発想による社会課題解決の可能性
-最近、ソーシャルイノベーションという言葉をよく耳にしますが、その理由を教えてください。
これまで日本では社会課題の多くを行政による財政支出によって解決してきました。しかし、少子高齢化、社会課題の複雑化、社会の持続可能性などの観点から、財政に頼らない仕組みを作らなくてはならなくなってきたのです。そこでビジネス的発想に基づくソーシャル・イノベーションに注目が集まるようになりました。
-行政主体の取り組みとはどこが違うのですか。
社会課題の中から何かのポテンシャルを見つけて事業として成立させて新しい価値を生み出し、社会課題を解決するということです。成功例を挙げるとすると、徳島県上勝町の「葉っぱビジネス」ですね。地域の高齢者が有していた花木の栽培ノウハウといった知恵を、料理の“つまもの”として商品化する産業を軌道に乗せて、高齢化から生じる社会課題の解決にむけて重要な一つの方向性を示しました。
-社会課題をビジネス化すると言うことでしょうか。
ビジネスありきではなく、まずこの困りごとはどうすれば解決できるのか、この不便さを解消するのはどうしたらいいのか、社会課題を主語にして考えることが大切です。例えば駅の自動改札機は、駅の混雑や駅員の負担を軽減しようと考えられ、結果として私たちに便利さと快適さや新しい生活スタイルをもたらしました。社会課題の解決に注力することで、自ずと社会のあり方まで変わっていくものだと私は思います。
政策学研究科だからこそ養える社会を変える力
-なぜ、政策学研究科でソーシャル・イノベーション人材を養成しようと思われたのですか。
ソーシャル・イノベーション人材には多面的に物事を見る力が必要です。同じ方向から同じ見方をしているだけでは課題は課題のまま。その中のポテンシャルまで見抜くことはできません。さらに何とマッチングさせるか、新しい価値をいかに生むか、その価値を認めてもらえるためにどう発信するか、いろんな視点から眺めていろいろ試して可能性を見極めなければソーシャル・イノベーションは起こせません。
幸いにして政策学研究科は、私のような経営学の専門家をはじめ、環境や建築、都市計画、政治や経済、レジリエンス、言語など、さまざまな領域の研究者が集まっており、多様な切り口から物事を捉える力を養える土壌があります。この環境を生かさない手はないと考えました。
-政策学研究科は、行政や政治など公共政策の研究者を養成するイメージがありますが、すでに民間企業に勤めている社会人でも学べますか。
先ほども申しました通り、ソーシャル・イノベーション人材養成プログラムは、公共政策だけでなくビジネス的発想による社会課題の解決を考える力を身につけるものです。企業が従業員に対して新たに学ぶ機会を提供するリスキングや社会人が自主的に学び直しをするリカレントのニーズにも応えられるものになると思いますね。
広がる領域と相乗効果への期待値
-京都文教大学、琉球大学と連携した理由を教えてください。
そもそもこの三大学には、地域課題を解決する人材を養成する「地域公共政策士」という資格プログラムを運用しているという共通点があります。政策学研究科は、人文社会科学系のほぼ全域をカバーしているのですが、心理学の研究科がある京都文教大学と組むことによって、心理的安全性の高い組織の運営や社会課題の一つである職場のメンタルヘルスの問題に対応できる力を身につけられるようになります。また観光問題や伝統産業の振興など共通課題が多い沖縄の大学と協働し、京都地域以外の課題にも取り組むことで、多様な課題に対応できる人材が育てられると考えました。
-三大学で協働することにより学びの幅が広がるということですね。具体的にはどのようなカリキュラムを展開する予定ですか。
まだ具体的には決まっていませんが、それぞれの大学と協働で社会課題などを持ち寄り、フィールドワークなどを通じて解決策を検討する機会も設けようと考えています。三大学が連携することでどのような相乗効果があるか、今から楽しみですね。