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Training Program for
Social Innovation Designer

大学連携型ソーシャル・イノベーション人材養成プログラム

「ソーシャル・イノベーション実践演習」中間発表会 【後編】

[ 2026.8.31 更新 ]

中間発表会発表風景

2026年7月4日(土)、琉球大学附属図書館 ラーニング・コモンズにて、「ソーシャル・イノベーション実践演習」中間発表会が開催されました。
【前編】に続き、3つのチームが取り組む地域の課題の内容と教官のコメント、さらにチームでのプロジェクトの進め方、中間発表を終えての手応えや最終発表会に向けての改善点などをメンバーの声を交えてお伝えします。(順番は中間発表会当日通り)

■Cチーム

【地域の社会課題3】
「沖縄北部を中心とする共同売店の課題と社会的意義」

Cチームの発表 Cチームの発表

地域住民が共同出資して運営する「共同売店」。「ゆいまーる(助け合い)」の精神が根づく沖縄県で独自に広まった生活互助組織で、戦前・戦後を通じ200超集落で設立されたが、燃料革命・行政拡大・車社会・流通変化など社会構造の変化に伴い近年は次々と姿を消している。その地域で必要性がある「共同売店」をどう存続させるが課題。

中間発表会 タイトル

共同売店の仕組みをSI 視点で再設計する -「つながる地域機能ネットワーク」へ-

中間発表会までの研究・調査

個々の魅力を活かしながらさまざまな共同売店をつなぐ「共同化」によって買い物・見守り・交流・自治を支える持続可能な地域仕組みを再設計。共同売店を「個店」から「つながる地域機能ネットワーク」へ。

  • PEST分析 共同売店を取り巻く外部環境を丁寧に分解
  • 歴史分析・比較分析 なぜ昔成り立ち、今難しいかを確認
  • SWOT分析とS×Oクロス分析 強みと機会を掛け合わせる
  • 新しい提案でなく、過去を乗り越える共同売店ネットワーク仮説

〈中間発表会に向けた、チームの取り組み〉

共同売店を「懐かしい地域の商店」や「守るべき地域資源」としてだけではなく、今後も持続可能な形で地域に必要とされる事業モデルとして、再構築できないかを検討。共同売店の地域に必要な機能を維持しながら、どのように収益を確保するのかを考察。共同売店を単独の店舗として見るのではなく、地域の複数の機能をつなぐプラットフォームとして捉え、買い物、見守り、交流、配送、観光、福祉などを一体的に考えることで、共同売店の新しい可能性を提示した。
時間を調整しながらオンラインミーティングを重ね一度は直接顔を合わせて話し合おうということで、龍谷大学に集まり、対面でのコミュニケーションも実施。メンバーそれぞれが自分の専門性や立場を踏まえて、自発的に役割を認識しながら進めた。

3大学の先生から発表後のアドバイス

●琉球大学 田中先生

アドバイスを送る田中先生

共同売店という社会システムの一つの基点となる部分をどう維持していくかという視点にされた方がいいのではないか。ネットワーク化という意味では、共同売店を網羅するということは大事だが、もう少し的を絞った方がまとまりのある研究になるのではないか。

●京都文教大学 濱野先生

共同売店は、もともと地域の生活を見守る場所になっていた感じがする。その視点からも考えてみると、活性化の糸口の違う視点が生まれてくるのではないか。

●龍谷大学 服部先生

共同売店が地域を支えられなくなったのではなく、共同売店を地域が支えられなくなった。それで苦労している。問題は共同売店ではなく、高齢化など地域の変化、ECサイトの台頭といった小売り形態の変化にあるのではないか。

大宜味村社会福祉協議会/共同売店ファンクラブ 眞喜志様コメント

コメントを送る眞喜志様

共同売店についてこの研究を通じて、初めて知ったにもかかわらず、事業の構想を作られたことに感心しました。ただ、先行研究への言及もほとんどなく、実際にどうやってネットワーク化するのか、誰がするのか、予算はどうするのか。まだまだ絵に描いた餅というか、机上の空論の部分も多い。今までほぼ行政の支援を受けずに、地域の皆さんが自分自身で支えてきた仕組み、これをどう支えていくか。沖縄にある変わった商店を何とかしようという表面的な問題ではなく、過疎化、高齢化、買い物難民問題という全国的な課題に、住民が主体となって取り組んでいる、自治をどう残していくかというところを深く考えないと、ソーシャルイノベーションとは呼べないと思います。

龍谷大学政策学部 「ソーシャル・イノベーション実践演習」担当 内田恭彦教授コメント

このチームの課題は、多くの地方や中山間地域とは違い資本主義的な考えで生産性を高めるのではなく、「共同売店」という社会システムを維持しながら生産性を高めること。逆に言えば生産性を高めても「共同売店」という社会システムを維持できなかったら意味がないことにあります。まずはこの「共同売店」という社会システムとはいかなるものか、というところをしっかりと考えてください。「共同売店」が経済的な基盤を得ることができなくなったという問題点に関しては出ていたと思いますので、今後はこの特徴ある社会システムに、どのように価値をつけていくことができるか、詰めていっていただければと思いました。

最終発表会に向けて、チーム代表コメント

これまでどのような研究や実践が積み重ねられてきたのかをきちんと理解しておく必要がある、という指摘を受け、思いやアイデアだけで進めるのではなく、先行研究や既存の取り組みを丁寧に確認したうえで、関係者の方々に失礼のない形で学ばせていただく姿勢が大切だと気づいた。
今後は、社会福祉協議会、自治体、共同売店の関係者、地域住民の方々などとの対話を積み重ね、地域が本当に必要としていることや、すでに行われている取り組みの課題を理解しながら、私たちに具体的にできることとの接続を考えていきたい。
最終的には、計画や提案だけで終わらせるのではなく、演習期間中に小さくても具体的な取り組みにつなげられるよう、現場との対話を大切にしながらプロジェクトの精度を高めていきたい。

3大学の先生から講評

龍谷大学政策学部 内田恭彦教授

公表を行う内田恭彦教授

3グループとも社会構造の深いところまで、分析して、問題の本質は何なのかということを捉えようとしていたということは本当に素晴らしいことだと思いました。
これからに向けては、NPO でも民間企業でも誰が主体者になって、どこからどのようにして直していくのか、ソーシャルイノベーションを起こしていくのかということをしっかりまず考えていただきたい。
その上で事業計画を作っていただきたいと思っております。
誰がどのような財政基盤を持ってやっていくのか、それが続けられるのかということが非常に重要です。行政にお願いしたらお金が下りてくるのかと言ったら、そういう状況ではありません。だからこそ、このソーシャルイノベーションが非常に求められているというところをしっかりと考えていただきたいですね。

京都文教大学臨床心理学部 大橋良枝教授

公表を行う大橋良枝教授

心理学の視点から言うと、変化は必ず抵抗を伴います。まず誰がその変化を求めているのか意識し、分析や理解したことをどう伝えるのか、伝えられた相手は皆さんの分析をお聞きになってどう思われるかということまで考えること。 “今の状態”で利を得ている状況があるにも関わらず変化を伝えなければいけない時は、分析が相手にとって腑に落ちるか、それぞれの生活や生き方に対して、目を向けて配慮しながら伝えているか、ということがとても大切です。
私がある限定された人の研究を行う中で学んだことなのですが、特定の人たちや非常に限られた集落や集団に対し、特異性まで含め徹底的に深く考え抜いて導き出された原理は、汎用性が高い。教育や福祉、産業などさまざまな分野で応用できます。逆に言えば、浅く広くやりすぎてしまうと、意味がないことになる可能性もあるのです。
期待するのは、生きた人間の生きた生活を大事し、そのうえで、より生きやすくなる、その人たちが求めている生活を実現するためにできることは何かを考えること。一人一人の人を大事にする、そこに生きている方に恋するような、そんな気持ちで取り組むと良いのではないでしょうか。

琉球大学大学院地域共創研究科 本村 真研究科長

公表を行う本村 真研究科長

各グループともに、福祉用語でいうところの、当事者が必要と感じている主観的な「フェルトニーズ」と、専門家や社会が当事者の必要を見極める客観的な「ノーマティブニーズ」、そして「エンパワーメント」という3点で考えてもらえたらと思います。
具体的には生産性第一主義や社会の変化によって不利益を被る方、あるいは被っているように見える方が本当は何を求めているのかということをしっかりとまずは押さえる。そして、社会福祉協議会の眞喜志さんのように当事者と直接関わっている方が何を求めているのかをきちんと確認しておいてもらいたいと思います。
部外者(よそ者)の意見が地域を活性化すると言われたりするように、外部からの新たな視点という意味でノーマティブニーズも必要な面はあります。ただ、フェルトニーズとは乖離があるということはしっかり意識しておいてください。
そしてエンパワーメント。外部から何かをするのではなく、自分たちで出来ているんだ、出来るんだという感覚を確認・醸成することは、持続性を考えると非常に重要なことです。そのためには直接不利益を被っている方のエンパワーメントなのか、それとも社会課題を何とかしようとして関わっている現地の方のエンパワーメントなのかを明確にすることが大切です。3チームともこれらを踏まえて、自分たちの方向性を再度確認してもらえたらいいかなと思います。

龍谷大学政策学部 中森孝文政策学部長

中森孝文政策学部長

目先の利益を追求することも、事業を進めていくうえでは非常に重要です。しかし同時に、社会課題を取り巻く複雑な関係性をつぶさに考察し、解決策をどのように実現し、持続可能なものにしていくのかという、中長期的な価値創造のストーリーを考える力を身につけていただくことも、このキャップストーンプログラムの大きな狙いの一つです。
このプログラムに参加した受講生の皆さんは、これまでとは異なる視点から物事を見たり、異なる分野の知識や考え方を取り入れたりすることによって、新たな気づきを得てきたのではないでしょうか。視野が広がり、課題を多面的に捉え、その中に新たな可能性を見いだすこともできるようになってきたのではないかと思います。
また、これまで自分が積み重ねてきた経験や、現在学んでいる専門分野の知識が、このような形で生かされるのだということ、そして、さまざまな知識や経験を組み合わせることによって、新たな付加価値が生まれるということを、少しずつ実感し始めているのではないでしょうか。
今回の発表を拝見し、皆さんの発表に臨む姿勢や声の張り、そして、いきいきとした表情から、私はそのように感じました。受講生の皆さん、本日の中間発表、本当にお疲れさまでした。
このプログラムでは、限られた時間の中で、京都と沖縄という距離を越え、さらに専攻分野の違いを乗り越えながら、課題に取り組まなければなりません。手間をかけ、時には回り道をしながら、深く考えることも必要です。しかし、だからこそ、洞察力や創造力、さらには、さまざまな人々とのネットワークなど、得られるものがたくさんあります。
本日ご聴講いただいた皆様にも、このプログラムの醍醐味を感じていただけたのではないかと思います。今後も、ぜひ多くの方々にこのプログラムを受講していただきたいと思います。
最後になりましたが、本プログラムにご協力いただいている関係機関の皆様、今回の発表会をご準備いただき、会場をご提供くださった琉球大学の皆様、プログラムをご担当いただいている先生方、そして、本日ご参加いただいたすべての皆様に、心より御礼申し上げます。

※最終発表会は2026年12月龍谷大学にて開催予定です。