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Training Program for
Social Innovation Designer

大学連携型ソーシャル・イノベーション人材養成プログラム

「ソーシャル・イノベーション実践演習」中間発表会 【前編】

[ 2026.8.31 更新 ]

中間発表会集合写真

2026年7月4日(土)、琉球大学附属図書館 ラーニング・コモンズにて、「ソーシャル・イノベーション実践演習」中間発表会が開催されました。
今回は受講生の発表内容と感想などをレポートします。

「ソーシャル・イノベーション実践演習」とは

本プログラムの核となるキャップストーン科目。ソーシャルイノベーションデザイナー資格取得にも必要な「総仕上げの、総合的な経験をする実践的なプログラム」として、3つの大学院の受講生が共に取り組む。ソーシャル・イノベーションについて講義で学び、積み上げてきた理論をもとに、現実の社会課題解決にむけて地域に存在する社会課題とその制度・構造的な原因を明らかにし、解決に向けて地域に存在する資源と多様な学問領域の知見を融合させ、どのようにして新たな価値を生むのか、について計画立案するもの。

テーマの選定

3大学の担当教員が連携先機関(自治体や企業、NPOなど)と地域の課題(環境問題、人口減少、産業衰退、貧困、地域間格差、共生社会問題、島嶼問題など)について協議。受講生たちが取り組むテーマ案を3大学院が提示。「ソーシャル・イノベーション実践演習」を受講する14名(龍谷大学大学院9名、京都文教大学大学院4名、琉球大学大学院1名)がどのテーマに取り組みたいかアンケートを行い、3つのテーマが決定。ランダムに編成されたチームごとに、テーマの社会制度・構造要因や解決につながる方策を探究していく。

中間発表会はここまでの研究・調査結果をプレゼンテーションし、立案したソーシャル・イノベーションのアイデアを提案・実践するために12月に開催される最終発表会に向けてのステップとなるもの。各チームは事前に担当教員に向けてプレ発表をおこない、修正・調整。当日の発表に臨みました。

■Aチーム

【地域の社会課題1】
障がい者雇用の持続的拡大と企業価値創出の仕組みの検討

Aチームの発表 Aチームの発表

2026年7月から障がい者の法定雇用率が2.7%に引き上げられ、さらに障害者の雇用が進むと考えられる一方で、雇用が難しいと考える企業も少なくない。障害者の雇用を拡大するには、企業が障害者の雇用を「法定雇用率を満たすための義務」ではなく、雇用した障害者一人ひとりの個性を活かし「価値を生み出せる」環境をどう整え、企業価値を高めるための経営戦略の一部としてどう位置づけるかが課題。

中間発表会 タイトル

障害者雇用の現状と課題 -3社比較から見える特徴-

中間発表会までの研究・調査

障害者雇用が拡大しにくい理由について考察

  • PEST分析
  • 歴史分析
  • 比較分析(障害者雇用に関わる3社を訪問)

それぞれの雇用形態と現状をふまえてリスク分析を行い、地域のポテンシャルを抽出

1社目
主に精神障がい者を対象に一般就労・社会的自立への橋渡しをするNPO法人・A型事業所
2社目
軽度知的障がい者を中心に、障がい者が長く活躍できる職場づくりを目指す一般企業
3社目
知的障がい者が中心、一部精神障がい者に対し、グループ企業内で安定した雇用を提供し、将来的には親会社へのキャリアアップを目指す特例子会社

〈中間発表会に向けた、チームの取り組み〉

事業形態が異なる3社にヒアリングすることで、それぞれの課題や強みを抽出し、より多角的な視点で社会課題を理解することを目指し、3社それぞれにおけるリスク分散の関係図を作成するなど比較分析に励んだ。

メンバーの学業や仕事を考慮しながら日程を調整しオンラインミーティングを実施。オンラインミーティングでは、中間発表会の内容について検討し、現地視察に向けた準備や社会課題の歴史分析・PEST分析など役割分担をし、準備を行った。

3大学の先生から発表後のアドバイス

●京都文教大学 濱野先生

アドバイスを送る濱野先生

障がい者の中でも働いている人という前提がある感じ。なかなか働けない人にどうしていくか、そこへ視野を持ち、どれぐらい広げていけるのか。また障がい者が一人で働くことを前提としたモデルだけでなく、チームでその人の能力を資源として活用できるような、他者との支援の中で働く仕組みをどうつくるのか。

●京都文教大学 大橋先生

現段階では何を明らかにしようとしているのかわかりにくかった。3社を分析し、並べたところで目的がないと意味がない。ただ、地域のポテンシャルを挙げていたのはひとつの視点として面白いと感じた。

●琉球大学 Titus先生

アドバイスを送るTitus先生

誰が当事者かわからない。今の見たところでは、業者が当事者のように感じるが、誰のためのイノベーションなのか。障がい者が当事者であれば、そこを見る必要がある。そうでなければイノベーションできないのではないか。分析を積み重ねるだけでは新しいアイデアには至りにくいのではないかと感じた。

●龍谷大学 服部先生

アドバイスを送る服部先生

障がい者の雇用問題を個で対応するのは難しい。そういう意味でも企業の立場で整理するのは悪くないと思う。障がい者視点というのも重要だが、まとめるのは大変だと思うので。個人的な意見として企業からのアプローチという視点があるということを知れて、視野が広がった。

龍谷大学政策学部 「ソーシャル・イノベーション実践演習」担当 内田恭彦教授コメント

非常に面白かったのは、今の障害者雇用のあり方の問題点を詳らかにしようとしたこと。障がい者一人一人の能力をはっきりさせる、それをきちんと活用する仕事とは何かを考える。少なくともこの二つがないと能力の活用はほとんど掛け声になってしまいます。
本当に、障がい者雇用を促進していくためには何をやればいいのか。例えば週5 日定時出勤できないなら複数人のチームで働くワークシェアリングのような制度を導入するとか、みんなと一緒ではなく切り離してでもできる仕事を考えるとか、様々なアイデアが出せると思います。
もうひとつ、地域のポテンシャルは客観的に存在するわけではないので、企業と障がい者、それから支援組織、この三者の中のいろいろな人たちの立場に立って、何が見えるのか、何ができるのか、地域の資源をどのように活用していくかということを、考えていただきたいと思います。

最終発表会に向けて、チーム代表コメント

障がい者雇用を持続させていくためには、チームとして連携した支援を行っていく必要があるのではないか。重度障がい者にも視野を広げて検討していくことが良いのではないか。事業者視点だけではなく、障がい者を当事者としてイノベーションを検討することが重要なのではないか。ということに気付いた。
3社にヒアリングした内容について、引き続き分析を重ね、今回取り上げる社会課題の要因を明確化し、事業者だけでなく、障がいを持つ当事者へのヒアリングを行い、社会課題の要因に対する理解を深める。また中間発表でいただいたアドバイスを基に、再度検討を重ね、課題解決の方向性について議論していく。

■Bチーム

【地域の社会課題2】
映像文化のアクセシビリティ向上とユニバーシャルシネマの社会実装

中間発表をおこなうBチームメンバー 中間発表をおこなうBチームメンバー

映像文化のアクセシビリティ向上とは、障がいの有無や年齢などにかかわらず、映画や映像などを「理解しやすく・利用しやすく」する取り組みだが、日本では映画やDVDなどの映像関係のアクセシビリティはまだまだ遅れている状況にある。また単にバリアフリー設備を置くのではなく、ユニバーサルデザインの考え方にもとづき、共に鑑賞する時間そのものをどうデザインするかも課題となっている。

中間発表会 タイトル

「観る」から「参加する」へ -社会構造分析と大学発ユニバーサルシネマの可能性-

中間発表会までの研究・調査

なぜこの課題が今もあり続けているのか社会構造を分析。そのうえで「参加する」とは具体的に何を指すのか、障がい者を消費者ではなく、共創者として位置づける。

  • ICFで問題を再定義
  • PEST分析 障がい者の参加を阻む4つの環境因子を分析
  • 国際比較 日本・韓国・英国の映画アクセシビリティ政策を比較
  • 身体障がいの区分と、鑑賞における課題と環境整備
  • さまざな分析、比較から障がい者を「支援される消費者(客)」から「文化を共につくる参加者・共創者」として位置づけ、自主上映が70年かけて設計してきた実践知を、会場・人材・地域連携の三層インフラをすでに持つ大学に接続する。

〈中間発表会に向けた、チームの取り組み〉

多様なバックグラウンドをもつメンバーの意を取りこぼさず、有期のプロジェクトとして遂行していくことを重視。障がいというテーマでプロジェクトを進めるうえで、社会構造として不可視化されている(またそれを内面化した自らの)視点に留意した。

週1回オンラインでミーティングを行いも政策学専攻の龍谷大学院生が社会構造をめぐる分析、臨床心理学専攻の京都文教大学院生が障がい者が置かれる社会課題を考察。発表にあたってはそれぞれ深く検討した部分を担当した。

3大学の先生から発表後のアドバイス

●龍谷大学 的場先生

アドバイスを送る的場先生

分析はとてもしっかりしていたが、そもそもその分析が何を目指しているのか、わかりにくかった。まずは一番大切な根本的な思い、「これを変えたいんだ」という研究目的の説明が必要。そこがないと、障がい者も共に映画作りに取り組むことの意義や目指す社会像といったところになかなかつながらない。

●琉球大学 本村先生

映画作りと映画の上映の場作りという両方があり、どちらの課題についての対応なのか、明確にする方がよいのではないか。映像を通したコミュニティや場作りとなると、健常者である我々に関しても、ヨーロッパと比較すると十分ではない。また最終的に映画のコンテンツそのものとかにも参加するというところまで踏み込むのか。

●龍谷大学 服部先生

映画館に行くことがすごくポジティブに捉えられており、映画館に行きたくないという人にとっては、価値観の押し付けみたいに感じてしまう。行きたい障がい者のために場を作るのはありとして、 配信で十分という意見に対してどう回答するのか

●京都文教大学 濱野先生

多様な人たちが制作から関わる自主制作の自主上映の話は、実際に自主制作ができ、それがビジネスとして成り立つのか。映画を娯楽やお祭りとして共有する空間をビジネスからどう演出するかに足場を置くと、ユニバーサルシネマという題材でもっと広がり、いろんなことが見えてくると思う。

龍谷大学政策学部 「ソーシャル・イノベーション実践演習」担当 内田恭彦教授コメント

よく分析していただいと思います。ただしタイトルに掲げている「参加」は健常者でもできてないことだと思います。それが必要だということであれば、まず「参加」ということが、障がい者にとってどんな意味があるのか、重要なのかということを明らかにし、だからこそユニバーサルシネマが必要なのだ、実現するのだ、という理論武装があるとより分かりやすかったと思います。
またソーシャル・イノベーションの主体者が誰なのかということを明確にしてください。コンサル会社か、上映を担う NPOや企業なのか、ということです。
ただ、かなり具体的にアイデアが出ており、基本的なビジネスを考えるプランとしてはスタート地点に既に立てていると思いますので、このまま追求していただきたいと思います。

最終発表会に向けて、チーム代表コメント

障がい者に対する理解が行き渡っていない日本の社会で、障がいのある方がごく当然に加わった映画作りについて、どこから取り組んでいこうかなということを話し合った結果、ユニバーサルな上映空間を考えようということからスタートした。しかし先生のコメントで何の疑問も持たずシネコン中心主義になっていたなということに気づいた。
改めて、プロジェクトが志向する目的や対象を明確にすることの必要性を感じた。メンバーの想いのすり合わせと、メンバーの内から湧き出るやりたいことを実装する仕方の検討に注力する。

※Cチームの中間発表と先生方の講評は後編で紹介します。