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Social Innovation
Human Resources Program

大学連携型ソーシャル・イノベーション人材養成プログラム

3研究科長鼎談【後編】

[ 2024.3.8 更新 ]

領域と距離を越えた3大学連携の魅力とは?

-現在、どのようにプログラムを進めておられているか、3研究科長が連携してどのようなことを議論されているか、お聞かせください。

中森先生:まずはカリキュラムの開発ですね。一般的には担当となる先生が、一人で一つのカリキュラムを作るのですが、今回のプログラムは3大学連携ですから、それぞれの強みやその地域の課題なども持ち寄って作っていくことになります。この研究科に来たから学べるというところを充実させたカリキュラムを開発していこうとしています。

濱野先生:我々は臨床心理学の方で提供できる何かを、今考えているところです。例えばこれからのビジネスは、人々に豊かさを提供するということに手を広げようとしていると思うのですが、そうなると従来型のビジネス発想だけでなく、人間理解を広げていかなきゃいけない。そういうことに対して心理学的な立場からどうアプローチしていくかとかね。

本村先生:このプログラムは、圧倒的に知識のボリュームがある専門の先生やそこで学んでいる学生から自分の領域とは違う知見を得たり、物理的な距離を超えて多様な課題に向き合ったりできるのがいちばんの魅力なので、そこを生かすものにしたいですね。

琉球大学大学院地域共創研究科 本村 真研究科長

中森先生:提供してもらった課題を実際にプログラムに落とし込み、学生に解決策を考えてもらおうと思っているので協力先も開拓しないといけないですよね。先進地域を視察したり、ソーシャルビジネスを展開している企業、ソーシャルビジネスを支援している公的な機関みたいなところと話をしたり。どういう人材が必要なんだろうかとか、どういうふうに教育していったら人材が育つだろうか考えながら。

本村先生:実は私、琉球大学を卒業した後、龍谷大学大学院にお世話なっているんですよ。そのとき京都でいろいろな刺激を受け、脳が活性化する部分がありまして。連携するカリキュラムは基本的にオンライン受講になると思うのですが、沖縄に軸足を置きながら外の世界を、身をもって体験できる仕組みも作りたいな、と。

中森先生:我々も沖縄に実際に院生たちが行って学ぶ機会を設けられたらと考えています。

濱野先生:実際に沖縄に行ったり、沖縄から学生を招いたりって、うちの大学だけでは絶対できない経験です。受講する院生はいい刺激になると思います。

中森先生:あとは一緒に開発していく、キャップストーン・プログラムというソーシャルイノベーション人材養成プログラムの総仕上げ科目に、どのような要素を持ち込んだらいいのかというところですね。

本村先生:思いもよらなかった展開、相乗効果的なものが起こるようなものにしていきたいですね。

-カリキュラム開発の他に、3研究科で取り組んでおられることはありますか?

中森先生:ソーシャル・イノベーション人材認証制度の立ち上げですね。新しく作る制度なので、それぞれの大学院が一番パフォーマンス発揮しやすいような制度にしていかないといけない。それと同時に社会から認められる制度にしないと。

龍谷大学大学院 政策学研究科⻑ 中森 孝⽂研究科長

本村先生:認証資格が、社会的実践の中で求められ知識・スキル・技能をより具体にし、それを実現できる人材の証であることに綺麗に繋げていかなければならないですよね。

中森先生:資格を取れたら終わりではなく、その資格ホルダーが活躍しているところをちゃんとリサーチしていくことも大切ですよね。資格ホルダーはこんなに社会に役立ってるんだよっていうことを発信していかないとソーシャル・イノベーションを学ぶ人たちがその資格を取りたいと思わないですから。

本村先生:そうですよね。我々としては、ソーシャル・イノベーション人材を育成するならサポートしたいという地域の企業などを継続的に見つけて、息の長い資格運用をしていきたいと考えています。

濱野先生:私がこうなったらいいなとイメージするのは、このソーシャル・イノベーション人材の認証資格を持っている人たちが一つのグループで働く姿なんです。我々の研究科で学ぶ院生は心理専門職に就くのであって、ソーシャル・イノベーションの専門家になるわけではない。でも臨床心理士としてグループに参加した時、同じソーシャル・イノベーションという発想のもとに学んできたということで、継続的に繋がっていけるし、心理職の立場からアイデアを出したとしても聞き入れてもらいやすいと思うんですよね。

本村先生:行政やNPOで働く場合も、ですね。

中森先生:ビジネス的な発想ができるソーシャル・イノベーション人材を養成することが、今回のプログラムの目的であり、その証として資格を用意するわけですが、行政やNPOにもイノベーティブな発想は必要ですからね。社会課題の解決に取り組む民間の人たちの中に行政もNPOの人も入って、そこに臨床心理士もいて、ソーシャル・イノベーション認証資格を共通項として最適な解決方法を探っていく、というのはひとつのかたちとしてあると思います。

濱野先生:そう考えると、このプログラムや認証資格は、いろんな人がコラボレーションしていく基盤というか、土壌作りみたいな要素もあるんじゃないかなという感じがします。このプログラムを修了した人や認証資格を取った人が継続して集まる機会を作るといいですよね。同窓会をするとか、沖縄でサミットするとか。ずっと繋がることでいい刺激になるし、その繋がりによって社会課題の解決に結びつく何かが生まれるような気がします。

京都文教大学大学院臨床心理学研究科 濱野 清志研究科長

-最後に、それぞれの先生が考えるこのプログラムの魅力をお聞かせください。

中森先生:通常はその大学に行くとその大学にいる先生のその分野の科目だけが取れるだけですけど、このプログラムは3大学の研究科が融合しているので、非常に多面的な視点から、物事を考えることができるということです。

本村先生:このプログラムの元々の目的は社会課題を解決できる人材を養成することなので、しんどさを感じている方々への共感がベースになると思うのですが、中森先生のおっしゃるとおり1研究科よりも本当に広いフィールドで学びながらアイデアを考え、ソーシャルイノベーションの楽しさを実感できる。大変お得なプログラムだと思います。

濱野先生:そのお得感は絶対に大事ですよ。臨床心理を学びたい人に向けては、困っている人の援助する時に直面する社会の問題について考え、臨床心理の領域から解決に向けて取り組めるプログラムなんですよ、とメッセージしたいですね。

中森先生:私の専門の経営学の世界で言えば、自分が買いたくなる商品だということ。自分がお金を出してでも買いたくなる商品を作らないと売れないのと同じなので、私自身が受けたいと思うプログラムを作ります。自信をもっておすすめできるようにしますよ。

濱野先生:本当に面白い学びができますよね。臨床心理学の領域の課題としていえば、LGBTQの方や障がい者の方などを含めいろんな人たちのいろんな働き方が認められる社会をどう作っていくかも考えられたりもしますし。

本村先生:外国人も含め、多様な人とどう協働するかは沖縄の課題でもありますね。今まで理系の大学で連携して何かをするということはありましたが、文系の大学が連携して何かをするというのは、私が知っている限りはおそらく初めてですし、私立の力のある大学の連携に国立の我々が入れてもらえるというのは大変光栄なことなので、私立大学、国立大学の良さを発揮できる取り組みにしたいです。このプログラムを通して、20年後30年後に沖縄に必要な人材を育成していきたいですね。

中森先生:3人が一緒に会う機会がそんなにあるわけではないのに、濱野先生も本村先生も私と同じような考えでいらっしゃるんだなと改めて感じました。力を合わせて良いプログラムを開発し、社会課題を解決できる人材を養成していきましょう。


京都文教大学大学院 臨床心理学研究科 濱野 清志研究科長

京都文教大学大学院 臨床心理学研究科 濱野 清志研究科長

研究分野:臨床心理学
京都大学法学部卒業、京都大学教育学部卒業。京都大学大学院教育学研究科博士課程修了(臨床心理学)。京都文教大学臨床心理学部臨床心理学科教授、京都府臨床心理士会会長。

琉球大学大学院 地域共創研究科 本村 真研究科長

琉球大学大学院 地域共創研究科 本村 真研究科長

研究分野:児童福祉、子育て支援、虐待予防、社会福祉援助技術論、島嶼コミュニティ研究
琉球大学卒業。龍谷大学社会福祉学修士課程修了。琉球大学人文社会学部人間社会学科教授 、琉球大学地域共創研究科公共社会プログラム教授

龍谷大学大学院 政策学研究科 中森 孝⽂研究科長

龍谷大学大学院 政策学研究科 中森 孝⽂研究科長

研究分野:経営学、知的資産経営、不合理、心的資産、産学連携
京都大学大学院法学研究科修士課程修了、神戸大学大学院経営学研究科博士後期課程修了、博士(経営学)。龍谷大学 政策学部教授