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Training Program for
Social Innovation Designer

大学連携型ソーシャル・イノベーション人材養成プログラム

受講生に対する期待と学び続ける大切さについて~講座担当者 中森教授にインタビュー~

[ 2025.5.2 更新 ]

今回受講された方々の成果報告会はいかがでしたか?

とてもわかりやすかったですし、非常に良かったと感じました。課題に取り組むにあたり、こちらで提出用のフォーマットを用意していたのですが、自分たちの事業に合わせて見せ方を工夫するなど、何とかわかってもらおうという努力をしてらっしゃいました。 こういう工夫や努力は、お客さんに事業を説明する時などにも役立つと思うんです。 具体的にこういう困りごとがあって、それを私達はこのように解決していきましたと提示した方が伝わりやすいですから。 しかも今回のように異業種の人たちと話す機会を持つことで、普段会社の中で自分たちが当たり前のように使っている専門用語が他の人には通じないということに気づくこともあるんですね。そうすると、この専門用語をどう置き換えたら伝わるのか、あるいは自社の強みなどを異業種の人々に伝えるにはどういう言葉を使ったらよいのかと深く考える機会にもなるし、ひょっとしたらその言葉が意味することを本当は理解せずに使っていたことに気づいたりします。Solution(ソリューション)という言葉をよく耳にしますが、それってどういうことかと尋ねたら、むにゃむにゃと答えるだけで何をおっしゃっているのかわからないことが少なくありません。あらためて自社の事業や強みについて社内の人と一緒に考えることでコミュニケーションも進む。結果として「自分たちの会社の事業ってこういうことだったんだな」と改めて理解することができると思います。

「成果報告会」での発表の中には、難しいことをちゃんとわかりやすく伝えようという人たちも何人かいたので、非常に良い話し合いができたんだなと感じました。また、私だけではなく内田先生、的場先生という異なる専門領域の視点からコメントをもらえたことも非常に刺激になったんじゃないかなと思います。

今回の講座を受講された社会人の方にどのようなことを期待されますか?

これで良かったと満足してしまうのでは意味がなくて、もうちょっとやりたいとか、ここまでやれたんだからよりもっと深く考えたいと思ってもらいたいですね。具体的には抽出した強みの成り立ちを深く知りたいとか、あるいは取り上げた社会課題題について、なぜこの地域でこの課題が発生しているのかを深く調べたいとか、まだまだやれることはたくさんありますから。
「成果報告会」の発表内容について的場先生からも指摘がありましたが、なぜその社会課題を取り上げたのか、という部分の考察が全体的に薄い部分がありました。社会課題を解決に導く新しい価値を創造するには、社会課題の分析や成り立ちをしっかりと掘り下げ、その課題を放置したら今後どうなってしまうのかというところまできちんと見て、その上で解決策を考えていくことをやらなければならない。そうすることでより具体的な事業や持続的な解決策に繋がっていくんです。でも実はそれをやるのはすごく難しい。 なぜその社会課題が生まれてきたのかということを考えるだけですごく時間がかかりますからね。

3回の講座だけでは、深掘りするのは難しいと言うことですね。

何かと何かをパパッと組み合わせて地域の課題や社会の課題の解決策が生まれるなら苦労はしません。組み合わせるときにこういう要素とこういう要素があるから組み合わせられますよねとか、ここに対してはこれがうまく機能しますよね、ということを本当に深く見た上で考えていかないといけない。そのためには、学び続けていく必要があるんです。その学びの場として、龍谷大学政策学研究科は社会課題をイノベーティブに解決する人材の育成を目指した「ソーシャル・イノベーション人材養成プログラム」を今年の4月から開講しました。プログラムでは社会課題に対しとことん議論して考えを深めることができますし、具体的な課題を通して実践的に学ぶこともできます。社会人の学び直しの場として受講することで、大いに力が付くと思いますね。

大学院で学ぶことで論理的に考える力が身につくと言うことですね。

私の父は職人でしたから、息子として経験と勘を軽視することはしませんが、全て経験と勘ではうまくいかないとも思っています。説明できることなのに説明せずに背中で学ぶというのはおかしいし、場合によれば意地悪ですよね。 ところが日本は多くを語らず、「悟れ」みたいな感じで、語らないことが美みたいなところがある。見抜いていくことに本質があるのならそれでもいいかもわからないけれども、別のところに本質があるとしたら何でもかんでも「見て学べ」というのは違うでしょう。時間がたっぷりあって、進化しなくてもよくて、競争相手もいないんだったらそれでもいいかもしれませんが、世の中はどんどん競争していく。可視化して伝えられるところは可視化して、わかっていることは口で教えて、今まで背中を見て学ぶために必要としていた時間を新しいものにチャレンジすることに使うほうがよっぽどいいことも少なくないと思います。例えば職人なら、今までのデザインに違う文化を融合させたらどうなるのだろうかとか、機械に任せられるところは機械に任せて新しい素材を試してみるとか、従来とは異なる分野のお客さんを広げていくためには異分野の勉強をしてくるということも必要だと思います。大学院は経験と勘も尊重しますが、その再現性を高めるために理論化することや、論理的に思考する力や分析力が身につきますし、多角的な視野や実践力も養えます。

大学院でのリスキリングに興味があるという社会人にメッセージをお願いします。

どんな仕事に就いている人でも、違う分野の人とビジネス以外で一緒に学んでみると、「自分は案外井の中の蛙なんだな」ということがわかると思います。 そういう意味でも、定期的に学び直すことは自己成長や新しい発見に繋がるのではないでしょうか。わざわざ大学院で学び直す必要はないと思われるかも知れませんが、思い切って学ぶ場に身を置くことが大事だと思います。たった3回のリスキリング講座の受講だけでも、会社はもちろん社会のことを深く考えるきっかけになったという人が多かったように思います。この3回の講座を受けた方はもちろん、1人でも多くの社会人の方に大学院での学び直しの必要性を知ってもらい、ぜひ受講していただきたいと願っています。

政策学研究科・龍谷エクステンションセンター共催for Business講座 レポート